menu menu

京都大学経済学部同窓会

Kyoto University Faculty of Economics Alumni Association

075-753-3419

【受付時間】平日10:00~16:00
※水・土日祝は休み

東京支部
Tokyo

2026年 新春経済交流会の報告

【開催レポート】2026年 新春経済交流会
地方が変わる、社会が変わる - 文化、ジェンダー、多様性から見る地域の再生 -

2026年1月17日(土)、京都大学経済学部同窓会東京支部主催の「新春経済交流会」を東京都中央区にある「銀座ブロッサム」にて開催しました。
2026年の幕開けとなる今回は、1970年代の卒業生から2026年卒業予定の現役学生まで、実に50年以上の時を超えた幅広い年代の60名強の同窓生が集まりました。
会場は、本同窓会ならではの温かい雰囲気に包まれながらも、激動の年を予感させる今の時代に必要な「刺激」と「勇気」を共有する、非常に密度の濃い時間となりました。

1.開会挨拶

柄澤康喜 京都大学経済学部同窓会長 兼 東京支部長

冒頭、主催者を代表して柄澤同窓会長より、世界情勢のリスクと日本経済の展望について挨拶がありました。
柄澤同窓会長は、昨今の米国政治の両極化や中国の動向など、緊迫するグローバル情勢に触れた上で、「こうした激動の時代において日本が持続的な成長を遂げるためには、既存の枠組みに捉われないイノベーションが不可欠である」と強調。
その具体的な突破口として、サステナブルな地球環境の維持、そしてDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進と地方創生を挙げました。
「これからの日本経済を支えるのは、地方の再生であり、多様な価値観を認め合う力です。本日は、この複雑な課題に対して明確な指針を示してくださる、まさに今このテーマで語るに最適なパネリストの方々をお招きしました」と述べ、パネルディスカッションへの期待と共に幕を開けました。

2.パネリスト・プレゼンテーション

今回は「京大経済出身」という枠にとらわれず、テーマを深掘りするために最適な各界のトップランナー三氏にご登壇いただきました。

中貝 宗治 氏(元豊岡市長。京都大学法学部卒)
「ジェンダーギャップ解消こそが地方創生の鍵」

人口減少の主因は「若い女性に選ばれていないこと」にあると断言。
豊岡市長時代、コウノトリの野生復帰や演劇による街づくりを推進した経験から、男性中心の硬直した構造を打破し、誰もが息苦しくなく生きがいを持てる「小さな世界都市」の重要性を説かれました。

稲垣 恭子 氏(京都大学副学長・教授。京都大学教育学部卒)
「ビロンギング(所属感)が育む新たな大学文化」

京大に多様性と所属感を両立させる「DEIB」の概念を導入。
地方女子学生の心理的障壁やジェンダー規範を可視化し、支援制度や「ここのえ会」を通じて、学生が安心して挑戦できるコミュニティ作り(ビロンギング)の最前線を提唱されました。

内藤 佐和子 氏(前 徳島市長・日本テーマパーク開発株式会社 代表取締役。東京大学法学部卒)
「意思決定層の多様性が地域を変革する」

史上最年少の女性市長としての経験から、意思決定の場に多様な視点が入ることで初めて政策や予算に変化が生まれることを強調。
現在は民間ビジネスの立場から、若手や女性への権限移譲を進め、地域を稼げる場所へと変貌させる「地域変革」の実践を紹介されました。

3.パネルディスカッション

各登壇者のプレゼンテーションのあとは、モデレーターの村上沙穂氏の進行により、パネルディスカッションを行いました。
パネリストの真摯なご発言に参加者の皆様が思わず聞き入ってしまう、非常に刺激的な議論が交わされました。
ほんのさわりではありますが、議題となったテーマをご紹介いたします。

テーマ1:地方活性化の「最初の一手」をどこに置くか

【モデレーター:村上氏】
地方活性化といったときに何からはじめるべきかがわからない方は数多いのではないかと思います。
地方活性化の「最初の一手」をどこに置くべきでしょうか。

【パネリスト:中貝】
危機をちゃんと見つめることだと思います。
91年当時の地方政治の合言葉は「格差是正」でした。
でも、格差是正ばかり言っていると自分たちが劣っているようで、活力が出ない。
大切なのは、あそこに行けば幸せになれるという目的地(ビジョン)のイメージを共有することです。
WhatとWhyがはっきりすればHow(どうやるか)は見えてくる。
ストーリーを描くところからスタートなのかなと思います。

【パネリスト:稲垣】
京大もジェンダーギャップが激しかったので、まずは「最下位です」ということを全部局に回って伝えました。
数値目標だけでなく、所属感(ビロンギング)を高めるための支援策を同時にスタートさせることが重要でした。

【パネリスト:内藤】
私は「誰が飛び込んで変えるか」だと思います。
実際に女性が市長や議長になり、数が増えていくことで、子育て政策などの予算が具体的に増えていきました。
自分たちで変えられるんだという実感値が積み上がると、町は変わっていきます。
変えていく意思を持った人が必要です。

【パネリスト:中貝】
目標設定も大事です。
コウノトリの保護を「野生復帰」と言うと支持を失いますが、「コウノトリも住める街(=多様な生き物が住める豊かな街)」と言うと、多くの人が参加してくれます。

テーマ2:文化への投資は「贅沢品」か「インフラ」か

【モデレーター:村上】
文化的な投資についても伺いたいのですが、演劇や伝統芸能、大学の文化発信などは、住民から「まずは生活の安定が先ではないか」と贅沢品のように捉えられがちである。
厳しい予算制約の中で、文化をなぜ「インフラ」として投資すべきなのでしょうか。

【パネリスト:中貝】
私はあえて「役に立つ」ということを前面に出しました。
豊岡演劇祭をやることで、大きな経済効果(観光効果)があることを示しました。
でも本当の価値は、訳のわからないものを受け入れる「寛容性」が育つこと。
それが街のインフラになるんです。

【パネリスト:稲垣】
文化は生きることと同じだと思います。
専門研究を子供にストレートに伝える熱意が、インフラとしての教育文化になります。
また、文化が産業に結びつくシーズ(種)はいっぱいあるはずです。

【パネリスト:内藤】
阿波踊りもそうですが、文化は地域の中で「斜めの関係」の人たちが繋がり、子供たちが育っていく環境を作ります。
私は日本全体がテーマパークだと思っているので、エリア全体の価値を上げていく運営をしていきたいと思っています。

テーマ3:変革に伴う反対勢力や摩擦への向き合い方

【モデレーター:村上】
新しい取り組み、特にDE&Iやこれまでにない文化政策を打ち出すと、既存の勢力や伝統的な価値観との間に必ず摩擦(ハレーション)が生じる。
リーダーとしてその反発をどう受け止め、巻き込んできたのですか。

【パネリスト:内藤】
選挙の時はバチバチでした(笑)。
反対派のところにも行きましたし、説明もしました。
説明を続けていくうちに、「理解はできるが、反対しなくてはいけないから反対なのです。」といったことも話してくれる方も出てくださって。本質的でない反対意見はしょうがないと割り切る部分もありましたが、対話を放棄することだけはせず、4年間説明を続けました。

【パネリスト:中貝】
圧倒的少数派からスタートするわけですから、対話しかありません。
農家の方々とコウノトリの話をした時、最初は怒られました。
でも「昔は田んぼに子供が鯉を追いかける光景があった。
お孫さんにそんな景色を残したくないか」と対話することで、立ち上がってくれる人が出てきました。
対立ではなく、違う面を見ているだけ。
耳を傾けてキャッチボールをすることが地道ですが近道です。

テーマ4:関係人口と地方創生のゴール

【モデレーター:村上】
将来的に地方に関わりたい同窓生へのメッセージも含めた締めくくりの議論です。
地方創生を進めるために何を目標にしていくべきか、帰属意識を高めるためにどのようなことができるか一言ずつください。

【パネリスト:中貝】
まずは関係人口だと思います。
いきなり移住はハードルが高い。
でも「この町は面白い、世界と繋がっている」と思ってもらえれば、外で力をつけた人がいつか帰ってきてくれる。
小さくても世界と繋がる挑戦ができる町であれば、人は惹きつけられると思います。

【パネリスト:稲垣】
ビロンギングを広げていくこと。
ソーシャルメディアや独創的な研究の発信を通じて、京大を応援してくれるファミリーを増やしていきたいです。

【パネリスト:内藤】
人口減少の中、全ての自治体が残るとは私は思っていません。
だからこそ、関わっていくエリアが元気になり、若い人が選ぶような会社やエリアを、挑戦できる環境として作っていきたい。
それが幸せに繋がると信じています。

【モデレーター:村上】
地方創生を行うには帰属意識や地方と関係を持つ人を増やすことから始めていくこと、そして、対話を通じて丁寧にビジョンを実装していく大切さを改めて感じました。
本日はありがとうございました。

会場からは熱い議論に拍手が送られ、パネルディスカッションは盛況のうちに幕を閉じました。

4.関係団体活動紹介:母校を支える同窓生の力

ディスカッションの後、大学と社会を繋ぐ重要な活動について報告がありました。

ここのえ会

ここのえ会の会長を務める浅山 理恵 氏より、女性卒業生と現役学生を繋ぐキャリア支援の現状について報告がありました。
会員100名を超えるネットワークによる支援の輪が、現役生の大きな支えとなっていることを報告しました。

京都大学 成長戦略本部

鈴木 卓馬氏より、大学の知見を社会実装するための産学連携プロジェクトや、新たな成長戦略について紹介があり、同窓生のネットワークへの期待が寄せられました。

5.懇親会

パネルディスカッションの熱気そのままに、世代を超えた活発な交流が行われました。

(自由に交流)
(自由に交流)
(稲垣先生を囲んでパシャリ)
(稲垣先生を囲んでパシャリ)
(仲良くパシャリ1)
(仲良くパシャリ1)
(仲良くパシャリ2)
(仲良くパシャリ2)
(世代を超えて交流)
(世代を超えて交流)
(ボランティアの運営メンバー)
(ボランティアの運営メンバー)

6.閉会の挨拶

本同窓会東京支部の荒木常務理事より閉会の挨拶がありました。

「激動の年になりそうな2026年ですが、パネリストの方々の真摯な言葉から、我々も多くの刺激と勇気を共有することができました。このネットワークこそが我々の財産です。事務局有志一同、これからも同窓生の皆さんが集まり、交流するきっかけを作っていきたいと願っています」

最後に、2026年5月9日(土)16:00–19:00にKKRホテル東京で予定されている第36期支部総会での再会を祈念し、同窓生皆様の健康を願う言葉で、盛会のうちに幕を閉じました。

京都大学経済学部同窓会東京支部  堀 潤(2007年卒)